屋島工房のグローブに新しいラインナップが増えました。それはサメ革。革そもそもの大きさが小ぶりで使いづらく、養殖できないため希少で、加工に手間もかかるので高価な革の一つでもあります。しかしその強靭さと柔らかさは、グローブ向きの素材であること間違いなし。しかも元々海の生物なので、水にも強い・・・。これまでの牛・馬・鹿にない、新しい魅力に包まれたグローブができました。
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出会いは、今から10年ほど前になります。あるタンナーからサメ革の紹介がありました。その昔から、サメ革は丈夫で独特のシボ(表面模様)を持っていて、財布などの材料として使われてきた歴史がありました。
サメ革と聞くと、「わさびおろし」にも使われたそのザラザラとした鱗を伴い、手袋向きでは無い・・・というイメージが先行しますが、実は鞣した後の革はふんわりソフトでしかも強靭。また、もともと海の生物ですので、水には強く、汗や雨に影響されるライディング・グローブ向き。ゴツゴツした表面は、使っていくうちに適度に脂分が入ることでつややかな光沢を出すことでも有名です。それゆえ高級腕時計のバンドとしても珍重されてきました。
グローブを作る上で、残念なのがその大きさ。フカヒレを取るため背中に大きな穴が空き、背で二枚に分けられるのが通常です。しかも捕獲時についた傷などで、大きなパーツを取るのがとても困難です。10年ほど前に手に入れた時は、サメ革自体の大きさと染色に問題があり、グローブの量産化には至りませんでした。
そして昨年、全く違うタンナーからサメ革の提案がありました。それは、宮城県気仙沼で捕れたサメから作る革。震災でダメージを負った気仙沼が、サメを新たな産業とすべく、使いみちを模索していると聞きました。元々サメは、フカヒレを取った後は捨てられる運命に。近年ではコラーゲンや軟骨成分を抽出するための材料として用いられることもあるそうですが、海で格闘して苦労して獲ってきた割に安いのが難点・・・。
そんなある意味、「海の嫌われ者」であったサメを有効利用しようと始まったのが、今回のプロジェクトです。もちろんサメ革グローブとして売れた代金は、気仙沼の漁師に還流していくことにもなるのです。
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元々のサメは、こんな塩漬けor冷凍で入ってきます。この鱗の付いた状態では、ゴツゴツしたヤスリ状になっています。もちろん何もしなければ普通の魚同様に、すぐに腐る運命に。
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普通の革と同様に大型のドラムで鞣していきます。皮に残る汚れなどを取り除き、「皮」のコラーゲン繊維になめし剤を結合させ、安定した素材「革」に変化させる行程です。 |
サメの表面にゴツゴツした鱗が残らないように、サメ革を一枚づつ職人が板とヘラを使って丁寧にしごいて取り除いていきます。 |
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きれいに染色が乗るように、鞣した後ははこのような白い革になります。これから加脂、染色し、用途に応じた革に仕上がっていきます。おおよそ半身で1双分。グローブとして使えない部分は、廃棄となる運命にあります。 |
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そして、出来上がった革を用いてグローブを作りました。サメ革には、鹿や牛と違って、革の厚さのバラツキが有り、一定以上の厚さを求めるとサメ革を何枚も使う必要があります。それは、グローブとして常識的な値段にならないことを意味しています。
それゆえサメ革はグローブの顔の部分となる手の甲に採用しました。グローブとして安定した強度の必要な平側には、定評の鹿革を使いました。二つの素材を組合すことで、サメ革の良さを最大限に引き出すことができたと思います。
2020年モデルとして、今年はネイビーとブラウンを用意しました。ネイビーは、鮫革の素材のイメージを最大限活かせるよう、剣道着のような深い青にしてみました。ブラウンは、定番モデルとしてチョコ系に染色しました。ともに店主好みの色合いに仕上がったと思います。サメ革自体にも工夫を重ね、さらに柔らかくさらに柔軟に仕上げています。ワンポイントとして屋島工房のロゴマークを手の甲に配しました。
屋島工房でしか手に入らない天然素材を使ったグローブ。決して安くないグローブですが、震災復興にも間接的に役立っていると自負しております。この機会にぜひお試しください。
鮫屋島ショート・・・エルクグローブなどと同じく2つの材料をコンビ使いとし、手の甲にサメ革、平側のにニュージーランド産鹿革を使いました。サメ革のゴツゴツした魅力を最大限活かすために、ベルト等を用いないシンプルな形にしました。
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