手袋を作るのに最も適していると言われているのが鹿革。その柔らかさ・しなやかさと、相反するであろう強靭さを兼ね備える材料として、屋島工房でも最も多く使われている素材です。弊社で使う革は、基本ニュージーランドからやってくるのですが、日本にも在来種の鹿がおり、その革を用いたグローブを作ることになったのです。
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プロジェクトの始まり |
北海道でよく見ることのできるエゾシカ。温和な性格と愛嬌のある姿は、自然を愛でる観光客に人気の動物です。しかしながらその数が増えており、農業・林業への食害、そして交通事故の原因にもなっており、北海道における社会問題の一つになっています。
近年のジビエ(狩猟肉)ブームもあり、エゾシカを捕獲し利用しようという動きが広がっていますが、その副産物として革の利用も少しですが進んでいます。エゾシカの革の特徴はやはり、柔らかくて強いこと。袋物や帽子、そして手袋向きの素材でもあります。
屋島工房でも数年前から、エゾシカの革が持ち込まれ、何度かエゾシカグローブの製作にチャレンジしたことがあります。しかし結果はNG。
野生動物であるため、牧場で育った鹿とは違い傷などが多いのは当たり前。それ以上に問題だったのが、肉と皮を分けてからの皮の扱い方。基本ハンターや慣れない業者が扱うため、品質が安定せず、グローブ製作の量産には向いていないと判断せざるを得ませんでした。
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そんな時出会ったのが、今回のエゾシカの革です。北海道の狩猟者や業者から、タンナー(革職人)への流通に手間を加え、キレイで安定したエゾシカの革を供給することができるようになった・・・との事。
実際にその日からエゾシカの革を取り寄せて、サンプルづくりを始めました。もちろん日本の革といえども、甘やかすわけにもいきません。ライディンググローブとして、ウチの厳しい基準を越えることのできる革にする必要があったのです。
一年がかりで革の改良を繰り返した後、ようやく満足の行く革が出来上がりました。
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エゾシカグローブの誕生 |
エゾシカの革の特徴は、柔らかくて、しなやかで、それでいて強靭。床(裏)の毛も緻密で肌触りがとても良いものです。実際精密機械を磨く、セーム革としての需要が多いのもわかる気がします。
今回、革をエゾシカの夏毛のイメージ(写真参照)が残るライトブラウンに革を染めました。またグローブをはめた時、ふんわりと包まれるような感じを演出するため、革を厚めに調整しました。基本となるグローブの形はガンカット。ライディンググローブに最も適している形です。
このグローブを買ってもらうことは、エゾシカの革の需要が高まるということ。つまり・・・間接的ですが、狩猟者や食肉解体の方の利益になる話です。「風が吹けば桶屋・・・」の話じゃないですが、北海道の農林振興にも将来的に役立つこと間違いないプロジェクトなのです。
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