アメリカの国防総省が、調達する装備品の耐久性能を示した基準である「ミルスペック」規格。その規格に通ったものは、非常にヘビーデューティーで、破損や故障といったイメージとは程遠い物に仕上がっています。もちろん自衛隊にも、同様の基準があり、隊員が使う入れ物やバッグには、厳しい規格を通った素材が使われています。
緑色をした生地は、屋島工房おなじみのパラフィン(蝋による撥水)加工をした帆布生地。素材は綿でありながらも、自衛隊御用達のお墨付きをもらった強靭な材料です。綿ならではの肌触りと、使い込むほど魅力が増すエイジングが楽しい素材でもあります。
パラフィン加工の帆布は、素材を硬くし芯のある生地に変化させます。また、生地に爪を立てると「チョーキング」という白い跡が残ります。使っていくと新品時の生地の芯がほぐれ、いろいろな物との摩擦で生まれる無数のチョーキングによって、帆布に味わいが出てきます。そもそも防水のためのパラフィン加工ですので、少しの雨なら水の侵入を防ぐことができます。
ただ他メーカーが何故この素材を使いたがらないのかというと・・・それは帆布が異常に硬いため。重ね縫いにはミシンに負担をかけ、カバンをひっくり返す工程は、男性でも音を上げるほど。普通の縫製工房なら、扱うことを嫌がられる素材なのです。
今回は、10数年前に四号帆布で作り、当時好評だったビジネスバッグを復刻しました。元々四角いフェイスで使い勝手が良く、ビジネスシーンでも違和感が無いシンプルなスタイルを踏襲しました。
ただ・・・単純に昔と同じ物を作っても面白く無いので、今回は最近の屋島鞄の意匠となりつつある、持ち手とフロントポケットにつながるエプロン様のデザインを組み込みました。アクセス容易なポケットを前後に用意し、使いやすさとデザイン性を併せ持つデザインです。
ビジネス・・・と名付けるように、ノートパソコン+1泊分の着替え等が入る大きさに設定しています。中身が重くなっても快適に使えるよう、ブーツ用の革で作った肩パッド付きのショルダーテープをつけています。
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